みなさん、はじめまして。ゆーてぃです。
私は長い間スマホアプリなどゲーム関係のテストに携わった後、エンタープライズ領域に「Change The Way(うぇい)」しました。
経験はそこそこあってもまだ未熟な部分が多く、常に勉強する毎日ですが、「JaSST’22 Hokkaido」に参加できる機会をいただけましたので、学びの一環として実際に会場に行ってきました。
今回は開催内容から第三者検証機関としての観点での所感となります。

テーマ「Change The 道(うぇい)」

開催が北海道という事もあり、北海道(うぇい)、Way(うぇい)、道(うぇい)の意味を込めてのテーマみたいです。(オシャレですね~)

ホームページに記載されている内容はこちら

“ソフトウェアテストシンポジウム2022北海道(JaSST’22 Hokkaido)”を開催いたします。
「JaSST Hokkaido」は、今回で17回目になります。今回のテーマは「Change the 道(うぇい)」です。

道(うぇい)には、北海道、やり方(Way)、道(みち)の3つの意味を込めています。ここ数年で、エンジニアを取り巻く環境は大きく変わりました。リモートワークが常識となり、勉強会やシンポジウムなどの様々なイベントがオンライン化されました。どこにいても仕事をすることができ、学びを得るチャンスも格段に増加しました。場所という制約が取り払われ、私たちエンジニアはより自由になったように思います。自由を得るということは、同時に新たな挑戦が求められるということでもあります。今までと同じ道を歩いているだけでは、何も変えることができません。今こそ、これまでの道をみつめ直し、やりかた(Way)を考え、新たな道を模索していく必要があります。新たな道、新たな方法、新たなエンジニアのあり方をみなさんと一緒に考えることができるシンポジウムにしたいと考えております。

https://www.jasst.jp/symposium/jasst22hokkaido/outline.html

昔はあり得ないと思っていたリモートワークも今では当たり前の世の中になり、今回のようなシンポジウムなどもどこにいてもリモートで学べるのが普通になってきました。
今までの当たり前が当たり前でなくなる時、自分を見つめなおして、新たな挑戦をしていかなければいけないという…当たり前の様で一番難しいと思わされるテーマです。

それを踏まえた上で私が参加したのは下記の4つの講演になります。

①基調講演
ソフトハウス・トランスフォーメーション

②事例セッション1
探索的テストの導入効果および実施方法の納得性を高めるための取り組み事例

③事例セッション2
Microsoft「PowerAutomate」はテスト自動化ツールたり得るか

④招待講演
欲しい未来をカタチにする一歩

基調講演「ソフトハウス・トランスフォーメーション」

初めは「電気通信大学」の西 康晴様の講演。
時代の変化が目まぐるしい昨今で、リモートなどで自由度が増した中、今のままであり続けるのか、より高単価を目指してトランスフォーメーションするのかを、これまでの伝統的なオフショアの流れや、ニアショアのような内製化時代を生き残るためにどう考えていくのかのお話になります。

伝統的オフショア

1990年代後半から、ソフトウェア開発の一部の工程を海外の会社に任せる形態が主で、
デフレが続く中オフショア開発は有効な施策だと考える企業が多く、2000年頃から盛んになったと言います。
しかしながら実際にオフショア開発をやってみると”有効ではない?”と疑問を抱く企業も現れ、
2010年頃からは下記の様なデメリットが広く理解されてきました。

・意外に手間がかかる
-”言葉”や”残業や休日出勤が無理”など、壁が大きかった

・そんなに安くならない
-壁を埋めるためにブリッジSEを用意したり、日本側でフォローすることになる

・発注側の技術が空洞化する
-コーディングと設計を分離できない、色んなことをブリッジSEに丸投げするようになる

・アジャイル開発や自動化という新しい潮流に対応できない
-コストよりもスピードの時代、オフショアよりも内製化という流れになった

このオフショア開発の流れから西様は
“いまだに伝統的オフショア開発が有効な施策だと考えている企業は残念ながら時代遅れも甚だしい”
とバッサリいい切りました。

伝統的オフショアからどんな流れになったのか

オフショア開発が有効ではないと判断し、「ニアショア開発」を売り込む企業がでてきました。
ニアショア開発であればオフショア開発の問題点を解決できるという触れ込みでしたが、実際は”技術の高度化”、”日本人エンジニアの質と供給力の低下”や“東京のエンジニアがその所属のまま地方に住むようになってきた”など、時代の変化とともに“ニアショア拠点のメリットがどんどん小さくなっていく”との事です。結果時代の変化についていけず、日本からソフトウェア開発が消失してしまうのは自業自得、ネオ・オフショアの様な「ソフトウェア開発の全ての工程を海外のグループ会社に任せる形態」など、
「なんとかしてトランスフォームしないと日本のソフトハウスは凋落の一途を辿っていく」といいます。

ではどうすれば良いのか?

・仕事が増えればいい!
⇒技術をおいかけて仕事をもらおうとするが、開発そのものが上手になるわけではない。

・補助金をもらえばいい!大きな会社の傘下に入ればいい!
⇒人員や拠点数が増加しても技術力は向上しない。

結果“何もトランスフォームしなければ、何も変わらない”と、
何をどうトランスフォームしていくのか本題に入っていきます。

ソフトハウスの稼働率向上ビジネスをトランスフォームする

ソフトハウスは基本的に稼働率向上ビジネスであると思われていますが、稼働率の向上だけを目指すと、技術力向上に工数を振り分けられず、既存の案件にしがみつかざるを得なくなり、また単価は少しずつ下がっていく上に、ずっと低スキルの同じ仕事をするとモチベーションが下がり「こなし仕事」なってしまうとのこと。

どうやってソフトウェアハウスをトランスフォームしていくか

その中で西様が変えていかないといけないとお話したのは”お客様の捉え方”です。
自分たちがお客様をどう捉えられるかによってビジネスの種類を分けることが大事だといいます。

・神様ビジネス
-お客様の言いなりになって無理を言ってきたり低価低減圧力をかけてくる

・グレーターフールビジネス
-自分たちよりも低い技術力のお客様と付き合う低単価ビジネス

・相棒ビジネス
-共に技術を高めていく単価上昇型ビジネス

・後輩ビジネス
-経験をシェアし、悩みを相談してくるようになる比較的高単価ビジネス

・生徒ビジネス
-知識や経験を売るコンサルタントのような高単価ビジネス
※お客様の方をみなくなるリスクあり

・ファンビジネス
-お客様が惚れ込んでくださるかなりの高単価ビジネス

悪い例のビジネスではなく、良い例のビジネスにトランスフォームしていく必要があるといいます。
そのためにはお客様の本当の悩みに向き合い、学び続け改善し続ける作るようにマインドセットも必要とお話を締めくくりました。

所感

西様のお話を聞いた上で私が感じたこと、まずは”お客様の捉え方”として常日頃思っているのは
「共に良い商品を作るためのパートナーでありたい」という点です。
“お客様の捉え方”のお話で”相棒ビジネス”があったのですが、この中にこそ、第三者検証機関としての捉え方、マインドがあるのではないかと感じました。

時代の変化は加速度を増していますが、苦戦するのはお客様も自社も同じことなはずで、より良いものを提供するためには共に学び、スキルを身に着け、成長していく事が必要になります。

ただそうした時に、ずっと相棒ビジネスで居続けると長い付き合いがゆえに「こなし仕事」になりがちなので、お客様の悩みにも向き合って、寄り添っていくことを忘れず、テスト活動の幅の拡大やより高度なテストに繋がるチャンスを見逃さずに日々試行錯誤、挑戦していかなければいけないのではないかと感じました。

事例セッション

次は日本ナレッジ株式会社の藤澤 敏浩様、山本 涼平様の事例セッションです。
セッション1と2でお話いただいたので、簡単に内容をまとめたいと思います。

事例セッション1:「探索的テストの導入効果 および 実施方法の納得性を高めるための取り組み事例」

セッション1は藤澤様の探索的テストの事例となります。
探索的テストは事前に分析や設計など行わずに、テスト実行時に同時に行っていくため、仕様書がなかったり、不十分であったり、スケジュールに余裕がない場合に最も効果が大きいとされるテスト手法です。
柔軟性が高いテスト手法とはなりますが、分析や設計を行う記述式テストと比べて、事前にドキュメントを用意しない分、お客様に納得していただく説明が難しい点もあります。
そんな中、今回ご紹介いただいたのは記述式テストと探索的テストの併用型で、お客様と密にコミュニケーションを重ねつつ、効果や具体施策、それらの分析などで納得、及び成功した事例のお話となります。

要約すると下記となります。

  • 導入することによる効果を明確にする
  • リスクを低減するための具体施策
  • 担当者のスキル依存が高い手法に対し、スキル依存度を低くするための実施方法
  • 探索的テストを一定水準で定量化する方法
  • それらを、テスト分析、テスト計画の段階からステークホルダーと認識合わせを実施
  • 準備段階からステークホルダーへの説明、課題解消、密なコミュニケーションを重ねること

事例セッション2:「Microsoftの「Power Automate」はテスト自動化ツールたり得るか」

セッション2は山本様の「Power Automate」に関する事例となります。
お客様からテスト自動化ツールを導入したいが、知識や価格の壁が大きいとの悩みから、無料(または安い)のテスト自動化ツールを導入できないか?というところから始まります。
※前提として、本ツールを推奨・否定、使い方のお話がメインではないとも。

そこからお客様との「Power Automateを使ったテスト自動化の実現性調査」を行い、試行錯誤した結果、「大変だけど使える」との結論に到達したとのことでした。

セッション1と2の所感

探索的テストもテスト自動化ツールも説明する側はもちろんプロとして理解はしていますが、お客様は必ずしも理解しているわけではないという事。
プロフェッショナルとして相手に寄り添ってテストするだけではなく、相手の状況・環境を考え、知った上で説明やアプローチをするのも我々サービス業の一環だということを改めて考えさせられるセッションでした。
専門的な知識を身に着けてプロフェッショナルになるにつれて、大事なことを忘れてしまいがちなので、先を見据えることは忘れず、本質も忘れないで日々成長していきたいと思います。

まとめ

今回「Change The Way(うぇい)」として、日々時代が変化し続ける中、今一度自身を見つめなおし、変化にどう対応していくのかをしっかり考えた上で、自身、自社にとって何を目指すべきなのか明確にし、行動していきたいと思います。

最後に余談?となりますが、私はオンサイト参加でしたので、オンライン参加だった方にオンサイトならではの情報を…
実は「電気通信大学」の西様は講演中以外、”アロハシャツ”でした。

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